屋久島

登録年 1993年  登録基準(ⅶ)(ⅸ)自然遺産

鹿児島県

登録基準

登録基準(ⅶ)

樹齢数千年を超えるスギの大木が、梢部分を風などで欠いた傘型となっており、そうした独特な樹形のスギが林立している様子は、自然が生み出す類まれな景観。

登録基準(ⅸ)

屋久島は高温湿潤な気候であり、日本固有種のスギがほかの地域とは異なる形態で分布。日本ではブナ、ナラなどの落葉広葉樹林が大部分をしめるなか、過去の寒冷期にこれら落葉広葉樹が南下しなかったために、屋久島には針葉樹林としてのスギが現存している(遺存固有)。

亜熱帯から亜高山帯までの顕著な植生の垂直分布が見られるほか、種の分布が森林の発達や多雨による保湿効果などにより拡散的に分布されている。

遺産の概要

九州最南端から約60kmの海上に位置し、九州最高峰である宮之浦岳(1936m)をはじめとする1800m級の高山と、その周囲を取り巻く1000m級の山々が連なる山岳島である。面積は東京23区より小さいが、海岸線から山岳地帯まで急激に標高が変わる。亜熱帯植物から亜寒帯植物まで様々な植物が垂直に分布しており、地球上でも珍しい森林景観を形成。

なかでも象徴的なのがスギである。樹齢1000年を超えるものは屋久杉と呼ばれ、1000m未満のものは小杉と呼ばれる。

岩盤の大部分は花崗岩である屋久島は、九州山系が大隈半島の先端で地殻変動によって海中に陥没し、その後に山稜部が再び隆起して形成されたと考えられている。

新世代第四紀更新世氷期には、海水面が80~140m下降し九州と陸続きとなり、屋久島には九州に生息していたニホンザルニホンジカなどが渡った。しかし、間氷期を迎え再び九州から切り離されると、動物たちは島内の環境に適応し、ヤクザル、ヤクシカといった固有種へかわっていった。

①歴史的背景

中世には海上交通の要衝とされ、海外との貿易において重要な役割を果たす。屋久島にそびえる山々は、霊山とされ、屋久杉は神木として信仰された。そのため、伐採などの被害に合わなかった。

しかし、江戸時代、屋久島を領有していた薩摩藩は貴重な資源と考え、伐採を開始し、200年間にわたり続いた。1980年代にようやく一切の伐採が禁止。

②地形と気候

地形的には琉球列島の北端に位置し。薩南諸島に属す。北緯30度に位置する屋久島は亜熱帯気候の北限であるとともに、厳寒のシベリア気団の影響を受ける地域の南端に位置している。年間降水量は約4400mmに達し。降水日数も多い。平均気温も10℃を下回る期間はわずかで、高温湿潤。

 

具体的な遺産価値

①植物の垂直分布

海岸から標高100m付近まではアコウ、ガジュマル、メヒルギ(マングローブを構成する植物)などの亜熱帯性植物

標高700~800m付近まではシイ類、カシ類などを中心とした暖温帯常緑広葉樹林が広がる

標高700~1200m付近までは暖温帯針葉樹林

標高1200~1800付近では冷温帯針葉樹林が見られ

山頂部にはヤクシマダケ、ヤクシマシャクナゲの低木林が広がる。

1600m付近には日本最南端の高層湿原が広がり、ミズゴケやコケスミレなどを見ることができる。

 

②固有の動物

約1万5000年前に九州から切り離され、多くの固有種や亜種を含む動物が生息。ヤクシカ、ヤクザル、ヤクシマジネズミ、ヤクシマヒメネズミの4種の亜固有種を含む16種の哺乳類、ヤクシマカケス、ヤクシマヤマガラの2種の亜固有種を含む167種の鳥類のほか、爬虫類15種、両生類8種、昆虫類1900種の生息が確認。

 

屋久

島の中央山岳地帯である奥岳地域を中心とする標高600~1800m付近にかけて多く分布。花崗岩の地盤のため土壌に養分が少なく、生長スピードが遅い。そのため、年輪の幅が狭くなり、硬くなった幹には、ほかの地域のスギの6倍以上の樹脂が蓄えられている。樹脂の防腐・防虫効果が、スギの長寿の理由として考えられている。

 

過去問にチャレンジ!!

2017年7月1級問題

【問72】

屋久島』の形成過程として考えられている説明として、正しいものはどれか

①九州山系が大隈半島の先端で地殻変動により海中に陥没し、その後に再び隆起して形成された。

②氷河期に九州山系が氷河によって削られ、そこに海水が流れ込んで独立した島として形成された。

③新世代第四紀更新世の大地震で九州山系が崩落し、取り残された部分が風雨に削られて形成された。

④紀元前1世紀頃の火山噴火によって宮之浦岳が誕生し、その後の火山活動の連続により成層火山からなる山として形成された。

 

 

解答 正解は①

 

 

【問73】

同じく屋久島に関する出来事が起こった順番に並べたものとして、正しいものはどれか

A.屋久島のスギの一切の伐採が禁止された。

B.屋久島国立公園として独立の公園となった。

C.屋久島のスギの原生林が天然記念物に指定された。

D.屋久島北東部がラムサール条約登録地となった。

①A→C→B→D ②B→D→A→C ③C→A→D→B ④D→B→C→A

 

 

解答 正解は③

1923年に屋久憲法が策定

1924年には、天然に記念物に指定される。(しかし、人工造林などにともなう天然の屋久杉の伐採は続いた)

1964年島内の屋久杉が多く残る地域が九州の霧島とおもに国立公園にへ編入されると、天然林に対する保護意識が高まる

1980年代一切の伐採禁止

2005年には島の北東部がラムサール条約登録地

2011年霧島と切り離され「屋久島国立公園」として独立を果たす

 

2017年12月1級問題

【問47】

山岳島である屋久島が形成された経緯として、正しいものはどれか

①海底火山の噴火により現在の沖縄群島から屋久島までが隆起した

②九州山系の一部が地殻変動で海中に陥没した後、山稜部が再び隆起した

③沖縄プレートとユーラシアプレートが東西に離れるように変動したことで屋久島の風雨の陸地が陥没した

花崗岩の岩の上に堆積岩が乗ったもろい地殻のため海波や風雨によって削られて急峻な山岳島となった

 

 

解答 正解は②

 

 

2016年7月1級問題

【問22】

屋久島の特徴である多雨を「月に35日雨が降る」と表現した小説として正しいものはどれか。

武者小路実篤『人間万歳』 ②志賀直哉『灰色の月』

林芙美子浮雲』     ④幸田文『ちぎれ雲』

 

 

解答 正解は③

第二次大戦下、義弟との不倫な関係を逃れ仏印に渡ったゆき子は、農林研究所員富岡と出会う。一見冷酷な富岡は女を引きつける男だった。本国の戦況をよそに豊かな南国で共有した時間は、二人にとって生涯忘れえぬ蜜の味であった。そして終戦。焦土と化した東京の非情な現実に弄ばれ、ボロ布のように疲れ果てた男と女は、ついに雨の屋久島に行き着く。放浪の作家林芙美子の代表作。
 

2016年12月1級問題

【問72】

 屋久島において、海岸から標高100mほどの地域に生息する植物として、正しいものはどれか。

スダジイ  ②メヒルギ  ③タブノキ  ④ヤクシマシャクナゲ

 

 

解答 正解は②