登録年 2011年 登録基準(ⅸ)自然遺産
東京都
登録基準
登録基準(ⅸ)
海洋島である小笠原諸島では、長期間隔絶した環境での進化や適応放散など、様々な進化様式における独特の種分化が進んだため、生物や植物は極めて高い固有種率を示している。
遺産の概要
日本列島からおよそ1000km離れた海上に位置する、大陸と一度も陸続きになったことがない海洋島である。世界遺産には、30余りの島々の陸域(父島・母島の集落近郊、硫黄島、沖ノ鳥島、南鳥島は登録範囲に含まれない)と、父島属島の南島周辺の一部海域を含む総面積79.39㎢が登録されている。バッファー・ゾーンの代わりに、東京湾まで続く「世界遺産管理エリア」を設定している。
世界遺産に登録された海洋島には『ガラパゴス諸島』『ハワイ火山国立公園』などがあるが、これらは噴火によって誕生した「火山島」であるのに対し、小笠原諸島に含まれる小笠原群島は、地殻のプレートが沈み込むことで形成される「海洋性島弧」に分類。
①独自の進化を遂げた生態系
小笠原諸島の陸生生物は、移動能力が高い鳥類を除くと、在来の爬虫類はオガサワラトカゲ、ミナミトリシマヤモリの2種のみで、両生類にいたっては皆無。在来の哺乳類が、飛行能力を持つオガサワラオオコウモリ1種のみであることにも、海洋島における生態系の特徴が見られる。
一方、固有種や亜固有種が極めて多く、自然分布する昆虫のうち約25%、陸産貝類の94%が固有種である。特に固有属のカタマイマイ属は種数が多く、樹上性や地上性などの生活環境の違いによる同所的適応放散や、列島間における適応放散を観察することができる。
②小笠原の植生
固有種の占める割合が高く、特に維管束植物の固有種率は極めて高く、確認されている在来種441種のうち、161種が固有種。日本本土に見られるブナやカシ、シイなどはまったく存在しない。
③固有種と絶滅危惧種
近海ではクジラ種23種の生息が確認、全世界に分布する海生のクジラ種の3割に達する。周年でミナミハンドウイルカやハシナガイルカが出現するが、ミナミハンドウイルカについては小笠原群島に定住していると考えられている。
日本から約1000kmも離れた海上にあり、飛行能力のある鳥類も容易に到達できない海域であるため、定着している種は限られる。現在までに、鳥類は195種に及ぶが、うち14種が絶滅危惧種または準絶滅危惧種に指定。
こうした固有種を守る小笠原諸島の管理計画は、「小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会」が中心になって策定。
基本方針
①優れた自然環境の保全
②外来種による影響の排除・回避
③人の暮らしと自然の調和
④順応的な保全・管理計画の実施
歴史
小笠原諸島は、安土桃山時代の武士で、南洋探検を行った小笠原貞頼によって1593年に発見されたと伝えられている。1800年代になると欧米の捕鯨船が立ち寄るようになり、1830年には5人の白人と25人のハワイ人が初の入植者として移住を果たす。1876年に小笠原諸島は国際的に日本の領土として認められる。
過去問にチャレンジ!!
2017年7月1級問題
【問75】
海に関し、小笠原諸島でバッファー・ゾーンの代わりに設定されている「世界遺産管理エリア」の範囲として、正しいものはどれか
④小笠原諸島を中心とする半径500kmの海域
解答 正解は③
2017年12月1級問題
【問71】
小笠原諸島において、バッファー・ゾーンの代わりに設定されている保護区域として、正しいものはどれか
①周辺領域緩衝エリア ②世界遺産移行エリア
解答 正解は④
2016年7月1級問題
【問19】
小笠原諸島において「小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会」が中心となって策定した管理計画の基本方針として、正しくないものはどれか
①優れた自然環境の保全
②外来種による影響の排除・回避
③人の暮らしと自然の隔離
④順応的な保全・管理計画の実施
解答 正解は③
人の暮らしと自然の調和が正解
2016年12月1級問題
【問85】
小笠原諸島に関する以下の文中の語句で、正しくないものはどれか
・小笠原諸島は、地殻のプレートが沈み込むことで形成される(①海洋性島弧)に分類される。独自の生態系が育まれており、(②陸産貝類)や維管束植物などは高い固有率を示している。世界遺産には(③聟島(むこじま)列島)や父島列島などを中心に、(④父島の全陸域)、南鳥島周辺の一部海域などが登録されている。
①海洋性島弧 ②陸産貝類 ③聟島列島 ④父島の全陸域
解答 正解は④
父島・母島の集落近郊は含まれていない。