ナハニ国立公園 2022.10.30(日)


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登録年:1978年 登録基準:(ⅶ)(ⅷ) 自然遺産

カナダ

 

カナディアンロッキー北西にあたる、サウス・ナハニ川沿いの一帯に広がる公園。

上流はゆったりと流れているが、落差92mのヴァージニア・フォールを過ぎると岩をも削る急流となり、峡谷を蛇行しながら進んでいく。ナイアガラの滝の2倍の落差があり、メイソンズラックと呼ばれる高さ120mの巨岩がヴァージニア・フォールの真ん中にそびえ立ち、2つに分かれ見事な景観を生んでいる。

 

公園内は高緯度のツンドラ地帯でありながら気候が穏やかで、野生のハッカやシオンなどの植物が自生しており、温泉も湧き出る。車道はなく人がほとんど立ち入ることはない。

ナハニ国立公園は北緯60度以北にありながら、氷河に覆われなかった珍しい場所で、テーブル状の山頂が多くみられる。

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https://tuins.tuins.ac.jp/~satoh/n_w_a2002/n_w_a2002_1-3.htm

 

図表の通り、コルディエラ氷床とローレンタイド氷床が左右から北米大陸を氷河で覆ったが、カナディアンロッキーの一部だけは氷河に覆われなかった。その覆われなかった部分が現在のナハニ国立公園付近である。

最終氷河期が終わり、2つの間の氷河が後退すると、無氷回廊と呼ばれるエリアが生まれた。人類がアメリカ大陸に渡った、移動経路について長い間、この無氷回廊の部分がその移動ルートではないかという説が考えられていた。

しかし、2016年8月10日、英科学誌ネイチャーに掲載された研究結果によると、1万5000年頃に新世界に渡った祖先は、それまで覆っていた氷が既に消え、食料となる動植物が生息可能になっていた太平洋沿岸部を移動したことが考えられていると発表した。

同誌によると、人間が移動できるような回廊ができたのは、約1万2600年前とみられ、当時この周辺に動植物が生息していた形跡は皆無で、人類が長く険しい氷の断崖の隙間を移動する間、食べる物が何もない状況で移動することは困難であると考えたのだ。

Footprints at White Sands

2021年になって、北米大陸の内陸部で2万年以上前の人類の足跡を発見したという研究が米科学誌サイエンスに掲載。しかし、懐疑的な意見を持つ科学者も多い。

人類がアジアから北米大陸へ移住した時期については今なお議論されている。