白川郷・五箇山の合掌造り集落

登録年 1995年  登録基準(ⅳ)(ⅴ)文化遺産

岐阜県富山県

 

 

登録基準

登録基準(ⅳ)

合掌造り屋根は、雪の重みと風の強さに耐えるため釘などの金属物は一切使用しないなど、環境や風土に合わせて生み出されたもの。日本の農村に見られる民家のなかでも、独特の特徴を持つ重要な様式の建築物群として高い価値がある。

 

登録基準(ⅴ)

合掌造り集落は、山間部で暮らす人々の文化を代表する伝統的集落であり、生産体制、大家族制度といった特性、伝統に見合った土地利用の顕著な見本。大集落(白川郷)、中集落(相倉:あいのくら)、小集落(菅沼)といった、タイプの異なる集落形態は、それぞれの共通性と独自性を示す。

 

遺産の概要

白川郷の萩町の59棟、五箇山の相倉の20棟、同じく五箇山の菅沼の9棟が世界遺産に登録。白川郷五箇山は、約20km離れているが、南北に走る庄川と呼ばれる川で結ばれ、1つの文化圏を形成していた。

白川郷・五箇山の合掌造り集落 - 日本の世界遺産

白川郷・五箇山の合掌造り集落 - 日本の世界遺産

 

この地域は、標高2,702mの白山を中心とした山岳地帯であり、冬は日本でも有数の豪雪地帯として知られ、3つの集落では、1950年代までほかの地域との交流が大幅に制限されていた。庄川流域の狭い段丘面に築かれた集落で、稲作には適さず、農業はわずかな畑作のみ。それに代わる産業が養蚕や和紙漉き、火薬の原料となる塩硝などの生産であった。10~30人の一族が同じ家屋に暮らす大家族制度が守られた。こうした隔絶された環境、地域特有の社会環境や経済事情が、合掌造りという他では見られない建築様式をはじめ、独自の生活文化を生み出す土壌になった。

萩町集落(白川郷

庄川右岸の集落。登録された59棟のうち、31棟が江戸時代に建設された。この地域の家屋には平入りが多いほか、「屋根に煙抜きがない」、「土間部に床が張られている」などの特徴がある。

 

相倉集落(五箇山

3集落のなかで最も北に位置。20棟のほとんどが江戸時代から明治時代に建造されたものだが、昭和初期に建造されたものもある。平地が少ない河岸段丘に位置し、石垣によって敷地を平坦に造成するなどの工夫がある。

 

菅沼集落(五箇山

富山と岐阜の県境に位置する集落で、9棟が登録。平入りが主流である白川郷に対し、菅沼では、妻入りが多くみられる。

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「平入り ひらいり」難しい屋根の専門用語をやさしく解説。今日の屋根用語!第268日目 | 石川商店

 

 

歴史

石川県と岐阜県にまたがる白山は、8世紀頃から「白山信仰」と呼ばれる山岳信仰の霊峰とされていた。その白山を中心とする山岳地帯に位置する白川郷五箇山は、同じく8世紀頃から修験道の修行場として開拓され、その後も長く天台宗の影響下に置かれた。13世紀半ばには、白川郷を中心に浄土真宗が広まり、集落ごとに寺院や布教のための道場が設けられた。浄土真宗のの思想は長く浸透し、隣人同士の強い結束を育み、相互扶助組織である「結」など、独自の社会制度を生み出す土壌となった。

江戸時代になると白川郷は高山藩→17世紀末に江戸幕府の直轄領→明治維新

一方、五箇山加賀藩の所領とされていた。

 

合掌造りの特徴

①屋根

合掌造り家屋の特徴である45~60度の急傾斜の屋根は、豪雪地帯であるとともに、月の平均雨量が180mmに達する気候条件に合わせて生み出されたもので、雪降ろしの負担軽減、水はけを良くする効果をもつ。

 

②広い床面積

一般家屋に比べ、床面積が広い。塩硝は、床下の穴に雑草と蚕糞、土を混ぜ合わせたものを入れ、3~4年間、土壌分解させてつくっていたため、広い床面積が必要だった。また、伝統的に大家族制が守られ、広い居住スペースも必要。

 

③ウスバリ構造

岐阜県と富山県にまたがる伝統的な集落|たかはし さら|note

岐阜県と富山県にまたがる伝統的な集落|たかはし さら|note

ウスバリとは、小屋組の床を構成する部分で、これにより小屋組と軸組が構造的、空間的に分離されていた。

 

村による共通点と相違点

共通点

結:家族だけでの生活は難しく、相互扶助組織である「結」による協力体制が発展。

 

相違点

煙抜き

五箇山:煙抜きあり

白川郷:煙抜きなし

 

入り口

五箇山(特に菅沼):妻入り

白川郷:平入り

 

過去問にチャレンジ!!!

2017年7月1級問題

【問54】

白川郷・五箇山の合掌造り集落白川郷で、13世紀半ばに広まり、この地域独特の社会制度を生み出すきっかけとなった仏教の宗派として、正しいものはどれか

 

真言宗

浄土真宗

天台宗

臨済宗

 

解答 正解は②

 

 

2017年12月1級問題

【問66】

白川郷に関し、合掌造り家屋に特徴的な構造で、小屋組と軸組を構造的・空間的に分ける小屋組の底辺(床)の呼び名として正しいものはどれか

①ウワラタ

②ウスバリ

③クサール

④タキエンタ

 

解答 正解は②

 

2016年7月1級問題

【問77】

白川郷・五箇山の合掌造り集落白川郷で、「結」などに見られるこの地域独自の社会制度を生み出す土壌となった宗教思想として、正しいものはどれか

曹洞宗

臨済宗

天台宗

浄土真宗

 

解答 正解は④

 

2016年12月1級問題

白川郷・五箇山の合掌造り集落に関し、ブルーノ・タウトが語った文中の語句の組み合わせとして正しいものはどれか

・これらの家屋は、その構造が(A)であり、(B)であるという点においては、日本全国でまったく独特の存在である

①A.合理的ーB.経済的

②A.合理的ーB.論理的

③A.シンプルーB.経済的

④A.シンプルーB.論理的

 

解答 正解は②