富士山ー信仰の対象と芸術の源泉
登録年 2013年 登録基準(ⅲ)(ⅵ)文化遺産
登録基準
●登録基準(ⅲ)
富士山周辺では、古くから富士山を「神仏の居処」とする山岳信仰に基づいて山麓の湧き水などにも感謝するという独自の伝統があった。それは時代を越え、富士登山や巡礼の形式に受け継がれた。そして今なお生きる山岳信仰や伝統を伝える類のない例。
●登録基準(ⅵ)
日本の最高峰であり、円錐形をなす独立成層火山としての美しい姿は、日本固有の詩歌や文学作品にも描かれるなど、古くから様々な芸術活動の母体になった。19世紀には浮世絵に描かれた富士山の姿が近現代の西洋美術のモチーフとなり、西洋の数多くの芸術作品に影響を及ぼすとともに、日本の象徴として海外にも定着。
印象派(ゴッホ、モネ、ルノワール、セザンヌなど)を代表する画家たちは浮世絵に影響を受け、新しい絵画の創作に取り組む。
ゴッホ「タンギー爺さん」【複製画:マイクロファイバー】 | 絵画プリントグッズの通販 ORIE original
ゴッホ「タンギー爺さんの肖像」には歌川広重の富士山などがはっきり描かれている。
その他多くの芸術家に影響を与え、世界から「フジヤマ」として愛され、日本の象徴として心に刻まれた。
もちろん、日本でも富士山は古くから描かれてきた。平安時代の「聖徳太子絵伝障子絵」という作品に始まる。
以降は、鎌倉時代の「一遍上人伝絵巻」、室町時代の水墨画での富士山、江戸時代の浮世絵(有名なのは葛飾北斎の富嶽三十六景や歌川広重の富士三十六景)の作品。
構成資産
富士山域を中心に25の構成資産が登録。
1.富士山域
1-1.山頂の信仰遺跡群
1-2.大宮・村山口登山道(現富士宮口登山道)
1-3.須山口登山道(すやまぐち)(現御殿場口登山道)
1-4.須走口登山道(すばしりぐち)
1-5.吉田口登山道
1-6.北口本宮富士浅間神社
1-7.西湖(さいこ)
1-8.精進湖(しょうじこ)
1-9.本栖湖
3.山宮浅間神社(やまみやせんげん)
4.村山浅間神社(むらやませんげん)
5.須山浅間神社(すやませんげん)
6.富士浅間神社(ふじせんげん)
7.河口浅間神社(かわぐちあさま)
8.富士御室浅間神社(ふじおむろせんげん)
9.御師住宅(おしじゅうたく)(旧外川家住宅)
10.御師住宅(小佐野家住宅)
11.山中湖
12.河口湖
13.忍野八海(おしの)(出口池)
14.忍野八海(お釜池)
15.忍野八海(底抜池)そこなしいけ
16.忍野八海(銚子池)
17.忍野八海(湧池)わくいけ
18.忍野八海(濁池)
20.忍野八海(菖蒲池)
21.船津胎内樹型
22.吉田胎内樹型
23.人穴冨士講遺跡(ひとあなふじこういせき)
24.白糸ノ滝
25.美保松原(みほのまつばら)
富士山では、修行や巡礼を通じて、神仏の力を獲得し、「擬死再生」を成し遂げようとする独自の文化的伝統が育まれる。
歴史
噴火を繰り返してきた富士山は、恐ろしくも神秘的な山として「遥拝=ご神体から離れた場所からその方角に向かい参拝する方法で、富士山の場合は山麓から山頂を仰ぎ見て参拝」の対象であった。火山活動が活発化した8世紀末、噴火を鎮めるため、「浅間呉大神(あさまのおおかみ」を神としてまつり、富士山そのものを神聖視するという独自の信仰が生まれる。
火山活動が休止期に入った11世紀後半、日本の山岳信仰と、中国伝来の密教や道教が融合し誕生した修験道の修行が盛んになり、各地に修行者の拠点が築かれる。この頃になると、ご神体である富士山に登りながら祈りをささげる「登拝」も行われるようになった。登拝の起点には新たな神社が建立され、須山浅間神社や富士浅間神社へと発展。
16世紀末から17世紀にかけ、長谷川角行は、激しい修行で宗教的覚醒を獲得し、のちに「富士講」と呼ばれる富士山岳信仰の基盤になる組織を創始。18世紀後半には冨士講は一般人でも流行した。
過去問にチャレンジ!!
2017年7月1級問題
【問39】
「富士山」に関し、構成資産である「山宮浅間神社」の説明として正しいものはどれか
①社殿の背後に登山門があり、この神社を起点とした吉田口登山道が続いている
②境内に本殿がなく、富士山を仰ぎ見るための遥拝所がある
③『吾妻鏡』に鎌倉幕府2代将軍の源頼朝の命で武士がこの地を訪れた話が登場する
④国家鎮護の神社とされ、境内の_の森も登録されている
解答 答えは②
①は北口本宮富士浅間神社。1900年以上の歴史があり、やまとたけるのみことが東方への遠征の際、この地で富士山を遥拝し、「富士の神山は北方から拝せよ」とあり、祠を立てて祀ったのが始まりとされる。
③は人穴冨士講遺跡。長谷川角行が、苦行を行い、入滅したされる風穴。
2016年7月1級問題
【問72】
「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉ー」に関する、次の文中の空欄に当てはまる語句として、正しいものはどれか。
富士山では古くより、山頂や山城、山麓での修行や巡礼を通じて、神仏の霊力を獲得し、「( )」を成しとげようとする独自の文化的伝統が育まれてきた。
①擬死再生 ②歴却成仏 ③輪廻転生 ④即身仏化
解答 答えは①
③は死んで新しい生命に生まれ変わることを指す言葉。
2016年12月1級問題
【問86】
「富士山」に関し、鎌倉幕府2代将軍源頼家の命で「人穴冨士講遺跡」の洞内を探検した武士の霊的体験の話が登場する書物として、正しいものはどれか。
解答 答えは②
①はしゃくにほんぎと呼び、鎌倉時代末期の日本書記の注釈書。
③はぐかんしょうと呼び、鎌倉時代初期、作者は天台宗僧侶の慈円。神武天皇(初代)から順徳天皇(84代)までの歴史を、末法思想と道理の理念とに基づいて述べたもの。
④はほんちょうせいきと呼び、平安時代末期の著書。鳥羽上皇の命により、信西が編纂。
宿泊
富士山温泉 別墅然然(べっしょささ)
客室は全部で17室、全ての部屋から富士山が一望。専用風呂もあり、ゆっくり富士山を見ながら入るのは至福の時間ですね。行ってみたい。